受験生を持つ保護者としての経験を通じて、同じ境遇の皆さんの役に少しでも立つようなお話ができればと思います。ただし難しいことは書きません、というか書けません。どこの家庭にもある、だけど家族にとっては大切な出来事やひとときを、気の向くまま書いていこうと思います。皆さんも肩の力を抜いて読んでいただければと思います。
反抗期の向こう側に見えた光
「パパ、手をつないでいい?」
長瀞への家族旅行で、下の娘が突然そう言ってきたときは、思わず耳を疑ってしまいました。というのも、つい最近まで、この小学4年生の娘は私に対して完璧な”反抗期モード”だったからです。
「おはよう」と声をかけても、まるで空気に話しかけているかのように無反応。目が合えば即座に目をそらすか、あからさまな嫌悪感とともに睨みつけられる日々。半径2メートル以内に近寄ることすら許されず、娘が座っているソファに近づこうものなら、さっと立ち去ってしまう始末でした。
休日に「映画を観に行かない?」と誘っても、即座に「行かない」という返事。かと思えば、母親経由で「パパも一緒に」と言ってきたかと思うと、当日は知らんぷりを決め込む——。まるで、私は娘にとって”透明人間”と”疫病神”を合わせたような、複雑な存在でした。
ところが今では、驚くほど様子が変わりました。むしろ娘の方から積極的に話しかけてきます。「パパ、これ面白かったよ」と学校であった出来事を教えてくれたり、「これ、パパも食べる?」とおやつを分けてくれたり。ソファでも普通に隣に座ってくれるようになりました。
その変化を象徴的に感じたのが、先日の長瀞旅行でした。秋晴れの休日、紅葉狩りを兼ねて出かけた川沿いの遊歩道。ところどころ岩場があって、結構歩きにくい道でした。
「気をつけて歩いてね」
私は声をかけました。これまでなら絶対に無視されたシチュエーション。でも、その時の娘は小さくうなずいて、そっと私の手を握ってきたのです。忘れかけていた小さな手のぬくもり……いや、以前より確実にその手は大きくなっていました。
“いつのまに……”
子の成長と突然の雪解けに、思わずうるっときてしまいました。
ママ友関係という厄介ごと
反抗期を経て、娘は確実に成長していました。以前とは違い、家の手伝いも少しずつしてくれるようになりました。食器を運んでくれたり、洗濯物を畳むのを手伝ってくれたり。完璧とはいきませんが、その姿に成長を感じずにはいられません。
「宿題、終わったよ」と自分から報告してくれたり、「明日の準備、もう済ませたから」と計画的に行動するようになったり。反抗期真っ只中には想像もできなかった変化です。
「止まない雨はない」という言葉があるように、終わらない反抗期もありません。いま反抗期の真っただ中にいらっしゃる保護者の方々、どうかご安心ください。必ず光は見えてくるはずです。
しかし、子育ての道のりには次々と新しい課題が現れるものです。我が家の場合、それは「ママ友関係」でした。
3年生の時に娘をいじめていたA子とB美。二人は「ブスは近寄らないで」「あなたとは遊ばない」などと娘を仲間外れにし、クラスの他の子にも娘を避けるように言っていたようです。
そんな陰惨ないじめも、4年生になってクラスが変わってからは、ピタリと止み、春からずっと平穏な日々は続いていました。
ところが最近、彼女たちの母親から妻に頻繁にLINEが来るようになりました。「最近どう?」「今度ランチでも行かない?」「子供たちのことで、相談があって…」。一見何気ない内容の向こうに、別の意図を感じ取った妻は警戒心を解きませんでした。
というのも、A子とB美が最近険悪な雰囲気だというのを風の噂に聞いていたからです。正確には子供同士というより、母親同士が険悪になっていました。A子とB美が些細なことで喧嘩をして、子供同士はすぐに仲直りしたものの、その時の親の対応がお互いに納得できず、今度は母親同士が反目し合う事態に発展してしまったのです。
「まるで政治家の派閥争いね」と妻は苦笑します。「どちらも私を味方につけたがっている。でも、こんな時だけ調子よく連絡してくるなんて、うちは都合のいい存在なのかしら」
親だって自立しなきゃ
このような状況を見て、私たちが学んだことがあります。それは「子は子、親は親」という当たり前のことです。子供同士のトラブルに、親が必要以上に介入することで、かえって事態を複雑にしてしまうことがあるのです。
実は、上の娘の時に似たような経験をしました。当時、親同士のトラブルが原因で、知り合いのママ友が心を病んでしまうという出来ごとがありました。その時も、子供同士のささいな喧嘩が発端でした。ですが、母親たちの人間関係の方が複雑に絡み合い、最終的に悲惨な結果を招いてしまったのです。
それ以来、我が家では意識的にママ友関係と距離を置くようにしています。もちろん、必要最小限の付き合いは大切にしています。でも、それ以上の深い関係や、派閥のような関係には加わらないよう心がけているのです。
なぜなら、親が学校内の関係だけで視野が狭くなってしまうと、子供の人間関係がそのまま自分の人間関係になってしまうからです。「○○ちゃんママ」という呼び方も、その人の個性や人間性を狭めてしまうように感じます。ママである前に、一人の女性であり、人間なのですから。
子供の自立を促す「親離れ」と同様に、親自身も「子離れ」をする必要があるのかもしれません。子供のことは基本的に子供に任せ、親は親としての生活や関心を持つということです。ママ友と距離を置いても、結果として何の問題も起きませんでした。先生方も見ていないようで案外しっかりと見守ってくれていたし……。
長瀞での娘との手つなぎは、私に多くのことを考えさせてくれました。親子がそれぞれの道を歩みながら、時には手をつなぎ、時には離れて成長していく。そんな関係が理想なのかもしれませんね。
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とんび
ライター
中学生と小学生の2人の娘、妻と都内に暮らすライター兼ライターズオフィス経営者。取材で有名大学や一流企業に訪れると、「うちの子もこんなところで……」と妄想を膨らませる今日この頃。上の娘は某有名学習塾に通学中。下の娘も姉の影響で近所の個別指導塾に通い始めたところ。子供たちの塾通いが家の暮らしの中心となっている。ちなみに似顔絵イラストは上の娘が小5の時に描いてくれたもの。
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