
受験生を持つ保護者としての経験を通じて、同じ境遇の皆さんの役に少しでも立つようなお話ができればと思います。肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。子育ての道のりには様々な波があります。今回は受験が終わった後の入学準備の様子をお届けいたします。
通行手形はやはり「お金」
第二志望校に見事合格を果たした上の娘(中三)。喜びもつかの間、親としてまずやるべきことは入学金の振り込みです。半期の授業料や施設費等を合わせると、なかなかの金額になります。
うかうかしてはいられません。合格したらすみやかに入金せよとのお達し。入金なされねば入学は認めぬという厳しい通達。世の中の通行手形はやはり「お金」なのだと、急に夢から覚めたような気持ちになりました。とはいえ、まあいたしかたない。今の自分には何をするのも喜びと感じます。
一応、どこに受かっても大丈夫なようにあらゆる口座から小金はかき集めておきました。国や都の入学支援金はあるとはいえ、もらえるのは入学後しばらくたってから。先立つものが必要なのです。
助かったのが学資保険。上の子が生まれてすぐ、大学資金のためにコツコツと毎月積み立てていたのですが、「一時金を支払うがどうするか?」とのハガキが届きました。その分、満期の受け取り額は減りますが「もちろん受け取る」と返事。入学金の3分の1ほどはそれで賄えたので、非常に助かりました。
振り込みはATMやネットバンキングではダメで、銀行窓口で行い、振り込み証明書をもらわないといけません。銀行窓口など久しぶりです。いつも混んでいるイメージがあるので朝一番に向かいました。そのおかげか閑散としており、すぐに呼ばれます。高校から指定された振り込み用紙を使って手続き。「合格おめでとうございます」──とか言われるかと思いましたが、行員は淡々と作業を行うだけ。慣れているのでしょう。
隣の窓口では自分と同じような年齢の男性が、同じように振り込み手続きをしていました。「入学金ですね」と行員に言われていたので同輩です。一瞬目が合ったので「あなたもですか?おめでとうございます」と声をかけようかと思いましたが、もちろんやめておきました。心の中で握手をしあうにとどめます。
振り込みが済むと近くの喫茶店に行き、銀行窓口で受け取った振り込み証明書を写真にとってスマホで送りました。それによって、確かに納めたという証拠にするのです。ほどなく、“受け付けたので入学手続き書類を郵送で送る”という主旨の確認メールが来ました。銀行窓口→スマホ→メール→メール……ぜんぶスマホで済めばいいのに。進んでいるのか遅れているのかよくわからない仕組みです。
いずれにせよ、これで父親の勤めは半分果たしたことになります。振り込み証明書を見ながら、ひさびさにうまいコーヒーを味わいました。
書類の山と積み重なる出費
数日後、入学手続き書類が届きました。学籍票や保険調査票、修学旅行費の積立申し込み書などに記入し、住民票の写しとともに簡易書留で返送しなければなりません。一方で、ウェブ上で入学手続き(在学届的な。これは生徒が主体で行う。大学まで使うアカウントの登録のようなものです)を行う必要があります。こちらもまた、進んでいるのか遅れているのかわかりません。ぜんぶウェブで済ませてくれればいいのに……。
今回の受験で何度、郵便局に行ったことでしょう。こういうところにもまだ需要はたくさんあるのです。しかし、合格通知も昔は郵送だったらしいことを考えると、やはり郵便物は減っているのでしょうね。そんなどうでもいいことを考えられるのは、無事合格したからこそでしょう。
教科書や体操着などもこのタイミングで購入の申し込みを行います。制服がない学校なのでその費用がかからない(とはいえ、式典などのために原宿で”なんちゃって”制服は買いました。それでも2万円くらいなので、学校指定制服と比べると格段に安いです)のは助かりますが、それなりにかかります。
体操着の購入指定先はやはり地元の個人商店らしいスポーツ用品店。きっとこの高校の指定だけで食べていけるのでしょう。学校のロゴや名前の刺繍を入れるとはいえ、やはり普通のジャージーより高いです。「ユニクロでいいんじゃね?」と思いますが、小学校のランドセル問題もしかり、いろいろ大人の事情があるのでしょう。
ちなみに、それらさまざまな入学手続き書類にまざって、各教科からの宿題の指示書が入っていたのは、さすが難関校です。娘はいきなり目が覚めたようでした。言ってみれば、同じくらいの学力の子たちが集まるわけです。ある程度基礎学力の差があった中学とは違い、うかうかしていると、あっという間に置いていかれるでしょう。スタートダッシュが肝心、というわけです。
国語の宿題は本(マンガやラノベはもちろんダメ)を春休み中に3冊読み、感想文を書けというもの。そこで、我が書棚からおすすめの3冊を選び娘に渡しました。読んでくれるかはわかりませんが……。
片道二時間半!? 通学地獄への道
さてさて、残る問題は通学です。実は、合格した高校は自宅から片道二時間半の場所にあるのです。え、なんでそんな遠い場所にわざわざ?
それは簡単です。3年たてば某有名大学に内部進学できるからです。大学附属高校の最大のメリットはここにあります。本当に受験は(本気でやれば)つらい作業です。もう二度とさせたくありません。改めて大学を受験しようと思えば、高校に入学したらすぐに対策をしなければなりません。何のために高校に通うのかということになります。
人生の大切な時期に詰め込み式の勉強ばかりをさせたくはありません。もちろん、受験勉強によって計画性や忍耐力は養われたので貴重な経験だったと思いますが、そればかりが学びではないはずです。早すぎる就活もそうですが、若い時にしかできない経験は他にもあるでしょう。
地獄の通学とブランド力の天秤
ではなぜ、そんな片道2時間半もかかるような学校を選んだのか。嬉しいことに、大学付属校は他に3校受かっており、どの大学も有名です。どこに通っても親としては満足です。なかには自宅から片道40分という近場の高校もあります。それでも片道2時間半の学校に通うと決めたのは、正直に言えば「ブランド力」の違いです。
入学を決めた高校をB大学附属高校としましょう。他の高校も有名大学(C〜Eとしましょう)の附属とはいえ、申し訳ないですが知名度や偏差値的には、落ちた第一志望校(A大学附属)やBと比べて大きな開きがあります。
もちろん知名度で学校を選ぶのはナンセンスです。しかし、就職や自己満足感を考えると、片道2時間半でも選ぶべきはB校だと考えました。お金では買えないそのブランドを手にいれるチャンスを懸命の努力によって得ることができたのですから。娘も、通学の不便さを理由に諦めたら「一生後悔する」と言いました。
もちろん、遠ければ遠いほど通学定期代は余計にかかります。寮にでも入ったらそれ以上に大金がかかります。親想いの子ですから、親に忖度して自分の意思を押し殺しかねません。それだけはさせたくありませんでした。だから、「自分が通えるならお金のことは気にしないで」と最初に釘を刺しておきました。
また、仮に近場の他の附属高校に通っても、しばらくしたら、結局A大学かB大学を受験したいと言い出しかねないとも思いました。そうなれば、あの地獄の日々と地獄の塾代の再現です。それだけは本当に避けたいし、バカバカしい。だったら2時間半の一択なのです。3年、地獄のデスロードを耐えれば、晴れて有名大生になれるのですから。同じ地獄でも、こちらはむしろ嬉しい地獄です。
そんなこんなで、片道2時間半、往復5時間の通学生活が4月から始まることになりました。はたして、朝は何時に起きるのでしょう。弁当も作らなければなりません。おそらく、我が家は超朝型生活になるでしょう。それはそれで健康に良さそうです。
娘にとってはもう一つ課題があります。アルバイトや遊ぶ時間がないということです。アルバイトは、祖父母の家の掃除や買い物をした見返りのお小遣いで賄うことにしました。問題は遊ぶ時間です。せっかく大学受験がないのですから、多少は楽しい時間を過ごしてほしい。そして、何より、恋人との時間です。そう、実は塾の同級生と晴れておつきあいをすることになったのです。その詳しい話は、次回。
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とんび
ライター
中学生と小学生の二人の娘を持つライター兼ライターズオフィス経営者。都内在住。上の娘の高校受験を控え、毎日気が気でない日々を送っている。夜中に娘の部屋の明かりが消えるのを確認してから眠る日々が続いている。
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