
受験生を持つ保護者としての経験を通じて、同じ境遇の皆さんの役に少しでも立つようなお話ができればと思います。肩の力を抜いて読んでいただければと思います。子育ての道のりには様々な波があります。いよいよ最終回となる今回は、受験を乗り越えた我が家の新しい日常と、これまでの道のりを振り返ります。
ソファに寝転ぶ娘の姿が戻ってきた
3月。2月までとはうってかわって穏やかな日々を送っています。何より平日の食卓に上の娘がいる。受験前は毎日塾で、日曜の夜しか一緒に夕食をとれなかったので、これは大きな「景色」の変化です。
そして、ソファでだらだらとスマホを片手に寝転ぶ長女の風景も、この1〜2年、なかった景色です。これまでのストイックな生活の反動なのでしょう。少しは大目にみてやらねばと思いますが、そろそろ小言の一つも言ってやろうかと思っています。
もっとも大きな変化は、長女に彼氏ができたことです。同じ塾でずっと一緒にがんばってきた相手。最初はただの友達だったのが、異性として意識しはじめ、ともに大きな試練を乗り越えたことで、二人の仲は決定的になりました。さっそくあちこちデートしに行っているようですが、話を聞く分には健全なつきあいを行なっているようです。どちらかというと娘の方が主導権を握り、彼のほうは後ろからついていくタイプのようです。それが娘には「頼り甲斐がある」と見えるらしい。時代は変わるものですね。
二人とも4月からは大学附属高校へ進学。別の学校ではありますが、受験がないということで、時間の価値観は近くなるでしょう。お互いに高めあえるような関係性を築いていってほしいと思います。
小学6年生から高校合格までの道のり
さて、そろそろこの連載もペンを置く時が来ました。これまでの道のりを少し振り返っておきたいと思います。
あれは娘が小学6年生の時でした。なんの因果か突然「やる気スイッチ」が入り、高校受験に向けて某有名塾に通い始めたのです。最初は「中学受験には遅すぎるし、高校受験には早すぎる」と思っていましたが、その後の3年間、娘は驚くほど真面目に通い続けました。
毎日の大量の宿題をこなす姿に、親としては複雑な気持ちでした。でも、娘によれば「しないと気持ち悪くて寝られない」ほど習慣化していたようです。まるでハミガキと同じレベルで勉強が日課になっていたのです。
中学2年生になると、「そろそろ志望校を決めないと」という塾の講師の言葉に、私が「もうですか?」と驚いたことも懐かしい思い出です。私立か公立か、エスカレーター式に大学まで進めるのかどうか、家族で何度も議論を重ねましたね。
娘の道のりは決して平坦ではありませんでした。部活と塾の両立に苦しんだこともあれば、実技教科の内申点で思わぬ壁にぶつかったこともありました。恋愛で挫折を味わったこともありましたが、驚くべきことに「私は可愛い!大丈夫!」と笑顔で立ち直り、むしろその怒りのパワーで成績を急上昇させたのには驚きました。
娘の自己効力感の強さには本当に驚かされます。結果的に、これが受験を乗り切る最大の武器になったのではないでしょうか。
家族一丸で戦った受験本番
いよいよ受験シーズンを迎えると、我が家は完全に「受験モード」に突入しました。8校もの出願手続きに追われ、エクセルで出願スケジュールを管理したり、調査書の提出期限に慌てたり……。正直なところ、どんな仕事よりも緊張感がありました。
そして迎えた合格発表の日。なんと4校の合格発表が同日に行われるという奇跡的な状況に。第一志望は不合格でしたが、第二志望から第五志望まで全て合格という素晴らしい結果を手にすることができました。娘が「全部勝つ」と決意していたことを思えば、事実上の全勝と言えるでしょう。そこから入学手続きや入学金の振り込みなど慌ただしい日々が続きましたが、嬉しい悲鳴でした。
この結果は、娘の努力はもちろんですが、家族全員の支えがあってこそのものでした。特に小学4年生の下の娘は、お姉ちゃんのために早めに自室に引っ込む気遣いをみせてくれたり、「お姉ちゃん、頑張って!」と明るく応援してくれたりしました。妻も弁当作りなど、裏方として献身的にサポート。まさに家族一丸となって戦い抜いた受験だったと思います。
受験で得た宝物と新しい時間への期待
振り返れば、この受験生活で得たものは単なる合格通知だけではありませんでした。娘は継続する力、困難を乗り越える精神力、そして何より強い自己効力感を身につけました。こうした力は、高校生活やその先の人生できっと大きな糧になるでしょう。
また、家族の絆も深まりました。以前より会話が増え、互いを思いやる気持ちが強くなりました。「受験ロスになりそうだね」と妻が言っていたほど、我が家にとって受験は特別な時間でした。
一年前の私は、一年後にこんなおだやかな時間を過ごしているとは想像もつかなかったです。すべての学校に落ちて、浪人だ!と泣いていたかもしれないのです。でも、人生はなるようにしかなりません。上を見ればきりがないし、下を見ても自己満足なだけ。どんな結果にせよ、それをポジティブにとらえられるかどうかは自分次第なのだと思います。
4月からまた新しい時間が始まります。受験とはまた違う、怒涛の時間になるでしょう。附属高校といえども油断はできません。
ただ、これだけは言えます。未来は「今」の積み重ねなのであると。そこで最後に、受験中の娘の机に貼られていた、言葉をあげておきます。
「下を見て喜ぶな、上を見て悔しがれ」
これから新しい時間が始まるみなさんに、幸あらんことを祈りつつ、長い間のご愛読に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
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とんび
ライター
中学生と小学生の二人の娘を持つライター兼ライターズオフィス経営者。都内在住。上の娘の高校受験を控え、毎日気が気でない日々を送っている。夜中に娘の部屋の明かりが消えるのを確認してから眠る日々が続いている。
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