子どもが小学校から中学校へ入学する時に生じる「中1ギャップ」という言葉をご存知でしょうか。子どもが中学入学した頃に学校の様々な環境の変化に慣れないことが原因になり、いじめや不登校が起こったり、勉強が手につかず成績がガクッと落ちたりすることが起きます。親も新しい環境に戸惑い、不安が募りますね。今回のコラムでは、「中1ギャップ」について保護者が意識したい対策と解消法を具体例を交えて中高一貫校で長年生徒と向き合ってきたみらぴか認定サポーターの佐々木がお伝えします。
中1ギャップって何?
「中1ギャップ」最近耳にするこの言葉、成長して学齢が次の段階に上がる喜びや、新しい環境にワクワクしている気持ちに、冷水をかけて、必要以上に身構えさせますね。
そもそも“中1ギャップ”とは、小学校から中学校への新しい環境での学習や生活へ移行する進学段階において、うまく馴染めず、授業についていけなくなったり、人間関係で悩みが生じたり、いじめや不登校等が増加したりすることを表現した言葉です。
新しい学校に入学するって、そんなに大変なことなのでしょうか。不安になり、身構える前に、事実を見てみましょう。
中1ギャップの原因とは
学習や生活面の環境の変化による心理的な不安からくるもの
<小学校と中学校の違い>
- 小学校よりも広域から生徒が集まり、多様な友人と出会うようになる
- 教科ごとに担当する教員が違う
- 学習内容が幅広くなり、スピードも速くなる
- 各教科から宿題が出て、量が多くなる
- 自主的に勉強する態度が求められるようになる
- 小学校よりも校則やルールに基づいた生徒指導がなされる場合が多い
このように改めて違いを見てみると「勉強面」「人間関係」「生活面」で中学生になる子どもたちは大きな変化を経験することになります。これらの大きな環境変化に伴う戸惑いや不安が原因と考えられています。
新しい環境での不安や戸惑いは、誰でも経験すること
親も心配になりますね。でも、環境変化に伴う戸惑いや不安は、中1の時だけでなく、高校や大学に入学した時、社会人になった時などと同様に、新しい環境に身を置いた時、いくつになっても経験することです。誰もが初めは戸惑いながら、少しずつなじんでいって、環境に適応してゆきます。
文部科学省 国立教育政策研究所は、「中1ギャップの真実」という生徒指導リーフの中で、『「中1ギャップ」という語に明確な定義はなく、その前提となっている事実認識(いじめ・不登校の急増)も客観的事実とは言い切れないことから、「ギャップ」という言葉に必要以上に反応する必要はないと思われます。保護者は入学する前から心配して身構えたり、子どもの先回りをしたり、上手く乗り越えることだけを考えがちですが、子どもに目を向け起きている出来事をきちんと見ることが重要と感じました。
学校では、中1ギャップを受け止める体制ができています
近年、学校現場では、「子どもたちが、環境や状況の変化に少しずつ適応してゆけるようにしよう」という考え方が共有されています。また、スムーズに適応できるように、様々な工夫をしています。
例えば、人間関係構築のために、入学してすぐに友だちと交わるためのプログラムや合宿を取り入れたり、学習面では、各教科でそれぞれの教科に合った勉強方法やノートの取り方をレクチャーしてから授業に入ったりしています。子どもの不安を早めにキャッチするために、子どもと担任の1対1の面談を行うこともあります。
中1ギャップで親ができる対策
子どもの気持ちを聴き、受け止めること
親は、子どもが躓きそうになると、ついつい何か具体的な方法を教えて導きたくなるのですが、なんせ思春期の子どもです。そう簡単にこちらの提案に耳を傾けてくれません。私も子育て中に何度も試みては、失敗してきました。
まず、「聴いて」「受け止める」、時には「一緒に怒ってみる」など子どもの不安や心配事など現在の状況を「聴く」ことを意識し、関りを始めていくことが重要と感じています。
質問攻めはNG。子どもに話をさせる家庭内の環境づくり
帰宅するなり「どうだった?友達できた?」「楽しかった?」とこちらからの質問攻め。これには子どもは、嫌な顔をすることが多いようです。子どもって、こちらの肩の力が抜けている時、例えば料理をしている背中越しにつぶやいたり、食事中に他の話に紛れ込ませたりして、自分の気持ちを伝えてくる場合がありますよね。それをまずは「フーン、そうなんだね」「へー それで?」と聴いてみてはどうでしょうか。その上で「お母さんは、こう思うよ」「お父さんの場合は、こういう風に切り抜けたよ」などとご自分の経験を気軽に話せるといいのではないでしょうか。「こうしたらいいよ」だと考えを押し付けられているように感じてしまうかもしれないので、選択肢の一つを提示するイメージです。
私は、子どもが友だちや先生から言われたことを気にしている時には、共感をして、一緒に悲しんだり怒ったりしていました。そんなことをしながら気持ちを発散させるサポートしてあげるのも大切なことの一つです。
悩んでいる子どもを見守り、リラックスさせてあげたい
子どもは、些細なことを気にしたり、悩んだり、日々学校生活を送り、頑張っています。家に帰ってからゴロゴロしていても少し大目に見て、リラックスした気持ちで、日々の生活を送られるようにしてあげたいですね。
後に息子が「中学に入ったら、とたんに勉強しろとか言わなくなったよね」と言っていましたので、当時、一旦勉強のことは脇に置いて、新しい生活のなれることを無意識に優先していたのだと思います。
中1ギャップで親も悩んでしまったら、早めに学校に連絡してみましょう
子どもの話しを聴き、励ましたりだけでは解決できそうにない事柄が出てきたら、早めに学校に相談することをお勧めします。「いじめられているようだ」「どうしても勉強についていけないようだ」「学校に行きたがらない」「体調が悪い」など。心配ごとは尽きませんね。担任の先生はもちろんですが、養護教諭やスクールカウンセラーなどに、「こんなことで相談したらおかしいかな」などと思わず、お話ししてみたらいいと思います。
現在39歳になる娘は、中学校2年生ごろまでは、学校へ行くことを渋っていたことがありました。欠席連絡の時、心配で、「数学ができないのが嫌なようです」などと漏らしたら、担任の体育の女の先生から明るく「そうですかー、そんなこと心配ないですよー」と言われました。このたった一言が解決の糸口になった のを覚えています。
先生は「勉強のことは何とでもなりますよ、心配ないですよ」という意味だったのだと思います。でも私には、先生の言葉は「お母さん、視野が狭くなっていないですか?」と問いかけに聞こえて、ハッとしました。
なぜなら、そこだけに原因があるわけではないことは、私自身薄々わかっていたからですね。
親は、子どもに事が起きると原因を何かに特定したくなり、それに対処すると良くなるのではないかと思いがちで、私もその流れに入っていました。数学の塾にでも行かせそうな勢いでした。でも、原因は、他にいくつもあったのですね。慣れない電車通学、新しい人間関係、積極的でない性格、思春期の不安定さ、そして何より家庭内での家族との関係。疲れていたんですね。布団を引きはがして、無理やり起こしたり、駅まで車で連れて行ったり、いろいろやってみましたが、それはどれも上手くいかず、原因を数学に求めて納得しようとしていたことに気づかされました。
私が、もう少し視野を広く持って、娘が好きなことをさせてあげようと思い始めるきっかけになりました。縫いものが好きだったので、本物のミシンをプレゼントしたのも、この後のことです。
悩んでいるときは、大げさな相談でなくても、誰かにお話ししてみるといいと思います。それだけで子どもとの関わり方に余裕が出て、優しくできるのではないでしょうか。
スマートに子育てする必要はないので
子育ては失敗することなくスマートにはなかなかできませんよね。このコラムや子育ての情報でも、様々な方法や対策を提案されますが、うまくできないことに悩まないでください。
私がいつも若いママやパパに伝えたいなと思っているのは、まずは自分たちが思ったようにやってみたらということです。完璧な親はいません。子どもの悩みの原因がわかり、理想的な対応がはじめからできるわけではないし、同じように葛藤している親の姿や子どもを取り巻く環境や状況の変化に、子ども自身も何か感じることもあるのではないかと思います。行き詰った時には、他者の言葉に耳を傾け、心底納得して自分自身が変わっていき、子どもにも対応できていくのではないだろうかと思っています。
子どもの不安や心配事など現状を「聴く」ことを意識し、子どもを見守りながら、安心して生活が送れる環境とサポートをしてあげることが大切だと感じています。
それでも子育てで悩むことはたくさんあると思います。
誰かに聞いてもらいたい、そんなときはぜひ相談してください。
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佐々木 伸子
みらぴか認定サポーター
大学卒業後は百貨店勤務。専業主婦の時代を経て、離婚をきっかけに35歳で教員に。以降、担任・学年主任・教頭などを経験し、多くの生徒・保護者の方の進路や親子関係について相談を受け、サポート行っている。定年後も事務長として、管理職・教員を支援する側になり、長く学校現場に関わっている。現在は再婚し、ステップファミリー(成人した子ども3人、孫5人)の母。
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